針葉樹と広葉樹の違いって何?森から木材まで比べてみました
木材の種類には「針葉樹」と「広葉樹」があるのはご存知ですか?
針葉樹と広葉樹は、いったい何が違うのでしょうか。
家を建てる時にどちらの木材を使えばいいか迷ったら、どんなポイントを見ればいいのでしょうか?
気になるこの2つの違いを、ざっくり比較してまとめました。
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この記事の目次
針葉樹と広葉樹、まずは「葉っぱ」の違いがわかりやすい
まず、そのネーミングからしてわかりやすいのは、「葉っぱ」の形の違いです。
針葉樹は文字通り、針のように細く尖った形をしたものが多いです。
スギのように針状の小さい葉が集まってできている葉や、モミのように本当に先が尖っていて触るとチクリと痛い葉っぱもあります。
針葉樹は、冬でも葉っぱを落とさない“常緑樹”がほとんどです。
(例外として、針葉樹なのに平べったい葉っぱのナギや、落葉する針葉樹のカラマツもあります。)
いっぽう、広葉樹の葉っぱは、こちらも文字通り広くて平べったい形をしています。
形は非常にいろいろなものがあって、つるんとした楕円のような形から、モミジのようにギザギザ切れ込みが入ったもの、トチのように何枚かの葉っぱが集まって一つの葉になっている“複葉”というタイプなどがあります。
ちなみに広葉樹の中には、常緑と落葉の2種類があります。
ざっくりまとめると、まずは
●針葉樹は細くて尖った常緑の葉っぱ
●広葉樹は広くて平べったい葉っぱ。落葉と常緑がある
という見分け方をするとわかりやすいでしょう。
針葉樹はまっすぐ、広葉樹は丸っこく育つ
葉っぱの次は、木の「樹形」全体について見てみましょう。
針葉樹は、上に真っすぐ成長する性質があり、太い幹が一本伸びて枝が付き、全体的にとんがった三角形(円錐形)の樹形をしています。
クリスマスツリー(モミの木)の形をイメージするとわかりやすいですね。
いっぽう、広葉樹の樹形は樹種によってさまざまですが、枝分かれして大きく樹冠を広げ、全体的にこんもりと丸い形になります。
「この~木なんの木~♪」の、あの木をイメージするといいかもしれませんね。
このように針葉樹と広葉樹では、木の成長の仕方に違いがあります。
そのため、木材にする場合は、真っすぐな針葉樹の方が直材を取りやすいため、日本の木造建築の柱などにはおもにスギやヒノキといった針葉樹が使われてきました。
また、針葉樹はフローリングにしてもまっすぐな長い板が取れるため、目が通ってすっきりした印象にしたいときにはよく使われています。
広葉樹は枝分かれして育つため、真っすぐな幹が少ないですが、大きく育てば柱などにも使うことができます。
お寺の丸柱などには、樹齢百年や数百年のケヤキが使われていますよね。
広葉樹をフローリングに使うときは、長いものが取りにくいのて、短く切って使うことが多いです。
また、広葉樹は、木目を生かした家具、工芸品などにも使われてきました。
このように、成長の仕方を比べると
●針葉樹はまっすぐ育つ
●広葉樹は枝分かれして育つ
だから、木材の使われ方も違っているのですね。
針葉樹と広葉樹では「森」の様子も違いがあるの?
“木を見て森を見ず”ではいけませんので・・・お次は、針葉樹の森(針葉樹林)と広葉樹の森(広葉樹林)の違いを見てみましょう。
まず、針葉樹林と広葉樹林は、生えている場所が違います。
針葉樹は厳しい環境にも耐えるので、寒い地域や標高が高い山にも生えています。
北欧やロシアには針葉樹ばかりの広大な天然林がありますし、日本でも標高の高い場所や、やせ地などの厳しい環境にはマツなどの針葉樹が多く生えます。
また、日本では、針葉樹は人工林にたくさん植えられています。
日本国内の人工林(約1,000万ヘクタール)のうち、広葉樹が植えられたのはわずか30万ha(クヌギ6.6万ha、ナラ類1.4万ha、その他22万ha)にも満たず、そのほかはスギ、ヒノキ、カラマツなどの針葉樹が植えられています(平成24年林野庁統計情報を参照)。
広葉樹は、どちらかというと暖かい地域に多く生えます。
たとえば、アマゾンの熱帯林も広葉樹林です。
日本では、原生林から里に近い雑木林まで広い地域に生えていて、東北や北海道など涼しい地域では落葉樹が多く、南の方には常緑樹が多いです。
それでは、森の雰囲気は針葉樹林と広葉樹林でどのように違うのでしょうか?
常緑の針葉樹林では、木の下に光が届きにくいため、森の中は少し暗くなっています。
特に人工林は間伐などの手入れを行わないと森の中が暗くなり、他の植物が育たなくなってしまうので、しっかり管理することが大切と言われています。
いっぽうで広葉樹林ですが、広葉樹林の中でも落葉樹の森は明るい感じがして、地面にも色々な植物が生えて、秋には美しい紅葉が見られます。
常緑のシイやカシなどが茂る照葉樹林はうっそうとしていて、暗くジメッとしています。
広葉樹林の雰囲気は、樹種によって違います。
●針葉樹は寒い地域と人工林にある。暗い感じがする
●広葉樹はあたたかい地域の天然林にある。明るい森と暗い森がある
と、ざっくり覚えておきましょう!
針葉樹は軽く、広葉樹は重たい:材質の違い
針葉樹と広葉樹は、木材にしたときの性質も違います。
日本では、針葉樹は比較的速く成長するので、木材は軽くなります。
広葉樹はどちらかというとゆっくり成長するものが多いので、材質が緻密になって重たくなります。
ここで、木材の重さを表す「比重」を、いくつかの樹種で比べてみましょう。
【針葉樹】
・スギ(0.30~0.45)
・ヒノキ(0.34~0.54)
・アカマツ(0.42~0.62)
・カラマツ(0.45~0.60)
【広葉樹】
・ミズナラ(0.45~0.90)
・クリ(0.60)
・ケヤキ(0.47~0.84)
・ヤマザクラ(0.62)
となっています。
数字のばらつきはありますが、全体的に広葉樹の方が重たい木が多いですね。
ざっくり、針葉樹は軽く、広葉樹は重たい、といえそうです。
ただし、広葉樹の中でも例外があります。
たとえば、桐たんすや桐下駄の材料になるキリの木はものすごく成長が速いため、国産の木の中では最も軽い木(比重0.19~0.40)です。
また、木は育った環境によって成長スピードも違いますし、同じ木でも材質がばらつきます。
針葉樹でも屋久杉のようにゆっくり育った木は、とても重たくなります。
ですので、あくまで傾向としてですが、
●針葉樹は、軽い
●広葉樹は、重たい
とイメージしておきましょう。
そのため、木材にしたときの雰囲気も、針葉樹は軽やかで、広葉樹は重厚感があります。
<参考文献:「種類・特徴から材質・用途までわかる樹木と木材の図鑑―日本の有用種101」(西川栄明)>
針葉樹と広葉樹の「年輪」の違い
針葉樹と広葉樹の木材について、最も大きな違いの一つが、細胞の違いです。
理科の授業で習ったことがあるでしょうか?
水を吸い上げる木の細胞として、針葉樹の細胞には「仮道管」しかありませんが、広葉樹には「仮道管」「道管」の両方があります。
道管は仮道管よりも太く、物によっては肉眼で見ても違いが分かるほどです。
この細胞の違いによって、針葉樹と広葉樹では見た目の「年輪」の様子も違ってきます。
針葉樹の年輪は、仮道管でできていて、春には勢いよく成長して大きくて太い細胞が生まれ(夏目)、成長が遅い冬には小さく緻密な細胞が作られます(冬目)。
この細胞の大きさの差が年輪となって現れるため、違いがくっきりとわかりやすい年輪になります。
いっぽう、広葉樹も季節による成長の違いはありますが、仮道管に加えて道管の配列によって、さまざまな年輪を作ります。
くっきりと年輪が見えるケヤキのような木もあれば、道管が散らばっていて年輪があまり見えないホウなどの木もあり、かなりバラエティがあります。
●針葉樹は年輪がくっきり
●広葉樹はいろいろな年輪
という違いがあるのです。
この違いが、木材にしたときの表情の違いになります。
針葉樹は明るい色、広葉樹はとてもカラフル:色の違い
最後に、木材にしたときの色の違いについて見てみましょう。
針葉樹の木材の色は、白、黄、赤、茶系の明るい色が多くなっています。
たとえば、ヒノキのように白~ピンクの肌をしているもの、スギのように芯が赤っぽいもの、コウヤマキのように黄金のような色などがあります。
“木曽五木”の一つであるネズコのように、かなり黒っぽいものもあります。
広葉樹の木材は、とってもカラフルです。
灰色がかった色のナラや、赤~ピンクのサクラ、黄色っぽい茶色のクリといった木が、フローリングなどの建材としても人気です。
変わった物では、うぐいす色(緑系)のホウ、真っ黄色のウルシ、さらに海外の木では鮮やかな紫色のパープルハートなど、まるで彩色したように、とってもカラフルな色をしています。
●針葉樹は明るい色
●広葉樹はとてもカラフル
と、ざっくりまとめておきましょう。
この色の違いは、樹液などに含まれる成分の違いが影響していますが、この成分が、色だけでなく香りや耐久性などの木の個性も生み出しています。
ちなみに写真の樹種は、
(左:針葉樹)上からアカマツ、カラマツ、スギ、サワラ、ネズコ、コウヤマキ、ヒノキ
(右:広葉樹)上からセン、クリ、ホウ、ケヤキ、ヤマザクラ、トチ、ナラ
です。
まとめ:針葉樹と広葉樹、こんなに違う!
針葉樹と広葉樹は、ただ葉っぱの形が違うだけでなく、森の様子から細胞までさまざまな違いがあり、それぞれの特性をいかして木材が使われていることがわかりました。
針葉樹と広葉樹の違いがわかる人になって、奥深い木の世界を味わってみたいですね。
あなたが好きなその木は、針葉樹ですか、広葉樹ですか?
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