荘厳な森へモリップ!高野山金剛峯寺奥の院の旅
高野山真言宗総本山である金剛峯寺(和歌山県伊都郡高野町)。
あまりに有名なこの聖地に、奥の院(おくのいん)の森が広がっているのをご存知ですか?
今回のモリップは、全長約2キロメートル続く奥の院の、森に囲まれた参道を巡ります。
なぜ荘厳な大木の森がつくられたのか?
見どころは?
10のポイントでご紹介します。
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この記事の目次
その1:高野山金剛峯寺奥の院とは?
正式には一の橋から参拝します。一の橋から御廟まで約2キロメートルの道のりには、おおよそ20万基を超える諸大名の墓石や、祈念碑、慰霊碑の数々が樹齢千年に及ぶ杉木立の中に立ち並んでいます。
(高野山真言宗総本山金剛峯寺HPより引用:http://www.koyasan.or.jp/meguru/sights.html)
高野山を訪れたら、壇上伽藍、総本山金剛峯寺と併せて、クライマックスにぜひ訪れてほしい聖地が「奥の院」です。
一の橋へはバス(「一の橋口」下車)も出ていますので便利です。
道は多少の階段やゆるやかな坂がありますが、スニーカーでも歩きやすい道のりです。
まっすぐ歩いて1時間、じっくり見ながら歩く場合は2時間くらいの余裕を持って行きましょう。
トイレと無料休憩所は三の橋手前にあります。
帰りは裏道を出てバス停「奥の院口」から乗ると便利です。
定期開催されている森林セラピーのコースにもなっています。
その2:杉の巨木が立ち並ぶ金剛峯寺奥の院
金剛峯寺奥の院の全長2キロメートルの参道の脇には、20万基の供養塔と共に、どこまでも杉の大木が立ち並んでいます。
中には樹齢数百年のものもあり、昔から杉の森に囲まれていたことがうかがえます。
なぜ、このように杉の木立ができたかというと、その形にヒントがあります。
よく見ると、どの木も少しずつ葉っぱの様子や樹形が異なっていることがわかるのですが、実はこの杉は日本各地から苗木として運ばれてきて、ここに植えられたものなのだそうです。
たくさん並んでいる供養塔も、全国各地から参拝に来た人が持ち込んでお供えしたものですが、山の上の高野山まで重たい石を運ぶのは大変です。
そこで石でできた供養塔の代わりにと、杉の苗木を持ってきて植える人もいたようなのです。
出身地によりさまざまな遺伝子を持った杉の木立が、高野山が全国からの篤い信仰を集めていたことをうかがわせます。
その3:供養塔のデザインが意味するものとは
金剛峯寺奥の院に立ち並ぶのは、20万基もの供養塔です。
よく見ると色々な形がありますが、基本形はこの写真にあるようなデザインです。
この供養塔は5つの異なる形の石がセットになっていて独特のデザインで、それぞれに梵字が書いてあるものも。
その読み方と意味は、上から「キャ(空)」「カ(風)」「ラ(火)」「バ(水)」「ア(地)」で、この世を構成する5つの要素を表しているそうです。
ちなみに奥の院で一番大きな供養塔は誰のものかというと、徳川秀忠の妻・崇源院(すうげんいん)、つまり”お江さん”のもので、高さ6.6mもあります。
少し意外かもしれませんが、それだけ当時に権力を持っていたり、高野山への信仰が篤かったのかもしれませんね。
その4:金剛峯寺奥の院の一の橋、中の橋、三の橋
正式には一の橋から参拝したい、金剛峯寺奥の院。
この橋にはそれぞれ結界の意味があり、最初の一の橋(大渡橋(おおばし))は「発心(ほっしん)」を言意味し、修業の始まりの場所です。
合掌一礼して渡りましょう。
二つ目の中の橋(手水橋(ちょうずばし))は三途の川を意味しており、この世とあの世の境目です。
渡ると汗かき地蔵と姿見の井戸があります。
三の橋(御廟橋(ごびょうのはし))の先は、高野山を開いた弘法大師の御廟の聖域であり、橋は36枚の板でできていて、橋全体を1枚と数えて金剛界37尊を表しています。
また、橋板の裏には梵字が刻まれています。
橋を一つ渡るたびに変わる空気を感じながら、静かな気持ちで奥へと進んでいきましょう。
その5:高野山には戦国武将たちのお墓がたくさん
金剛峯寺奥の院には、誰もが知っている歴史上の人物、とくに戦国武将のお墓がたくさんあります。
不安定な戦乱の世では、いつライバルに自分のお墓が荒らされてしまうとも知れない状況で、高野山にもバックアップとしてお墓を置いておく武将も多かったようです。
現代風に言うと、高野山はお墓のクラウドのようなものだったのかもしれません。
自分の出身地や好きな戦国武将の供養塔を探したり、武田信玄と上杉謙信、織田信長と明智光秀などライバルのお墓を比較してみるのもいかがでしょうか。
現代での知名度とお墓の大きさは必ずしも比例しておらず、織田信長のお墓は意外に小さいものです。
また、明智光秀の墓石はひび割れているのですが、何度取り換えても不思議と割れてしまうのだとか・・・。
豊臣家墓所、結城(徳川)秀康の霊屋なども必見です。
その6:奥の院で会えるユニークなお地蔵さん
苔むした高野山金剛峯寺奥の院の地面や杉の根元には、さまざまな表情のお地蔵さんがたたずんでいます。
地蔵不動尊、お助け地蔵尊、身代わり地蔵尊、安産地蔵尊などなど・・。
長い年月を経て、すっかり森の住人のような妖精のようにも感じられるほほ笑みをたたえています。
このお地蔵さんの表情やスタイル、身に着けている着衣がじつにさまざまでよく見ると楽しめます。
特にインパクトが強いのが「お化粧地蔵尊」とも呼ばれている写真のお地蔵さん。
お化粧をして差し上げると、美人になれるのだとか・・女性ならぜひ出会いたいお地蔵さん。
参道のすぐ脇で存在感を放っているのできっと見つかります。
他にも、あなたの心に語りかけるお地蔵さんが現れることでしょう。
その7:奥の院3大アトラクション「姿見の井戸」
二の橋を渡ると待ち構えているのが、金剛峯寺奥の院の3大アトラクションと言われる「姿見の井戸」です。
世の人のために常に汗をかいているという「汗かき地蔵」のお堂の裏にひそかにあります。
この井戸の底をのぞき込んで、水面に自分の顔が写っていなければ、3年以内に亡くなってしまうというちょっと怖い言い伝えがあります。
勇気のある方はそっと覗いてみてくださいね。
また、他の三大アトラクションは、一つは三の橋手前の「水向け地蔵」。
たくさんの菩薩像に水を手向けて先祖供養します。
そして、三の橋を越えた聖域にある「弥勒石(みろくいし)」は、小さなお堂の中に納められた重たい石で、善人には軽く悪人には重く感じられるといいます。
片腕をお堂の中に入れて持ちあげられるかどうか、よければチャレンジしてみてください。
高野山参拝の思い出にもなりそうです。
その8:ちょっと変わった供養塔やお墓も
金剛峯寺奥の院にある供養塔の中には、歴史上の人物のみならず、企業や個人の持ち物もあります。
よく見てみると、ちょっと変わったユニークなデザインや内容のものもあります。
特に見ていただきたい一つが、「ふぐ」の供養塔。
なんとふぐの形をしています!ふぐ料理に携わる料理人の団体のようですが、ふぐの命に感謝して慰めるためのものでしょうか。
森の中に突然現れるふぐはなんだか愛嬌たっぷりです。
他にも、白ありの供養塔、ロケットの形をしたもの、コーヒーメーカーの物故者慰霊碑がコーヒーカップの形をしているなど、探すのがつい楽しくなってしまう供養塔が登場します。
高野山の荘厳な空気の中に、何だかくすっと笑えてしまう、そんな発見もどうぞ。
その9:高野山の森の生き物に出会えるかも
奥の院の森は、小さな動物たちの棲みかにもなっています。
参道ではきれいな色をした昆虫やヘビが現れることも。
また、夕暮れ時から夜にかけては、杉の大木に空いた穴の中に棲んでいるムササビの滑空する姿が見られることも。
弘法大師の教えの中に「禽獣草木皆是法音(きんじゅうそうもくこれみなほっとん)」つまり動物や植物すべて仏様の教えである、というものがあるそうです。
高野山金剛峯寺には森林を管理する山林部という部署がありますが、ここでは「共利群生(きょうりぐんじょう)」をめざした管理を進めています。
高野山の森である知さない土地とそれを包み込む森は、真言宗の教えそのもののような気がしてきますね。
森で生き物に出会ったら、そっと見守ってあげましょう。
■参考:高野山金剛峯寺山林部:http://www.koyasan.or.jp/forest/
その10:高野山の聖地燈籠堂と弘法大師御廟
最後の三の橋を渡った先、金剛峯寺奥の院のゴール地点は、写真撮影も禁止された聖域です。
ここには、皇族や著名人をはじめとして、多くの人々方々の願いが込められた燈籠が奉納されています。
燈籠の灯りで照らされた堂内は、厳粛でおだやかな空気が流れています。
お堂の先には、弘法大師空海が入定されているとされ、今も毎日、僧侶の手によって弘法大師のための食事が運ばれ捧げられています。
大師信仰の中心聖地であり、現在でも肉身をこの世にとどめ、深い禅定に入られており、わたしたちへ救いの手を差し伸べていらっしゃるという入定信仰を持つお大師さまの御廟所です。現在も参られる方々を救い続けていると信じられ、日夜多くの参拝者が絶えません。
(高野山真言宗総本山金剛峯寺HPより引用:http://www.koyasan.or.jp/meguru/sights.html)
たくさんの燈籠が照らす静寂な空間で、静かな気持ちで祈りをささげましょう。
まとめ:「共利群生」の教えを感じる森
高野山にある金剛峯寺奥の院の森は、まさに弘法大師空海の教えが現れたような、やさしさと尊厳に満ちた、驚く発見と出会いがある聖なる道でした。
大きな杉の木立に囲まれながら、森の清浄な空気を感じてみてください。
森が好きな人のみならず、歴史好き、生き物好き、どんな方でも感じるものがあることでしょう。