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最近話題の「森林認証」って何?その種類や目的とは

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2017.10.26

東京オリンピックやエシカル消費のシーンで話題になっている「森林認証」というキーワード。

聞いたことありますか?

じつは日用品にもよく見かけるようになった森林認証のマークですが、これって何なのでしょうか。

ちょっと気になるこの森林認証について、ざっくりとまとめてみました。

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オリンピックで話題になった「森林認証」とは?

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック。

新国立競技場が木造で建設されることも話題になりましたよね。

さらにこの新国立競技場で使われる木材は「森林認証」を受けていなければならないのだそうですが、この森林認証っていったい何なのでしょうか?

世界各地ではいま、森林破壊が問題とされています。

開発などにより、年間に331万ヘクタール(2010~2015年平均)、1分間に東京ドームおよそ1.3個分の森林が減少しています(平成27年度森林・林業白書より)。

許可なく天然の森を伐採するような違法伐採も後を絶ちません。

「森林破壊なんて自分には関係ない」と思いがちですが、毎日あなたが使っているコピー用紙や、建物に使われている木材が、もしかしたら世界のどこかで違法に伐採された木材かもしれない・・・!?

それってなんだかイヤだし、知らず知らずのうちに違法な木材を使ってしまうのも無責任な話ですよね。

そこで、木材が違法伐採されたものではなく、きちんと管理された森から生産されていることを証明するのが「森林認証制度」なのです。

とくに世界的なイベントであるオリンピックでは環境配慮も重要視されるため、2012年のロンドン五輪から、オリンピックで使う木材は森林認証を受けたものであることがルールになり始めたのです。

「森林認証」の仕組みとは?

森林認証制度にはさまざまな種類がありますが、多くは、NGOなどの第三者機関や木材業界団体が審査・認定をして、違法な木材を使っていない製品にマークやラベルを付ける、という仕組みになっています。

また「認証」をする対象は大きく分けて2つあります。

1)森林そのものを認証する(FM認証)

適切に管理された「森林」を認証してお墨付きを与えるものです。

審査を受けて合格した森林は「認証林」となります。

この「適切に」というのは、持続的なサイクルで育林や伐採がされていることや、野生の動植物や生態系への影響、原住民との共存、林業ではたらく人の労働環境など、制度によっていろいろな基準があります。

認証林から伐採された木材は「認証材」となって販売されていきます。

2)製品と流通を認証する(COC認証)

木材の流通は、丸太を製材してから家や家具、紙になるまで、とても長く多段階になっています。

たとえばせっかく丸太に「森林認証」マークがついていても、加工したり流通するうちに、認証されていないほかの木材と混ざってしまっては意味がありませんよね。

そこで、木材を加工したり流通させる会社に対しても認証する仕組みがあります。

きちんと「認証材」とそうでない木材を分けて管理しているかどうか、審査されるのです。

これによって、認証材と違法な木材などが混ざらないように守られています。

こうして森と加工流通の両方を認証することで、木材が加工されて私たちの暮らしに届くまで、認証のチェーンが切れない仕組みになります。

認証材を使っている製品には、「認証を受けた森の木を使っています」というマークやラベルが付けられるのです。

よく聞く「FSC」とか「PEFC」って何?

森林認証にはいろいろな制度がありますが、世界的にシェアが高く世界共通スタンダードとなっているのが、「FSC®」と「PEFC™」です。

さらに、日本オリジナルの認証制度「SGEC」などもあります。

●FSCとは

1994年に設立されたもので、正式には「Forest Stewardship Council (森林管理協議会)」といい、ドイツに本部があります。

2016年3月時点で81カ国1億8780ヘクタールの森林がFSC認証を取得しています。

その基準は世界一厳しいといわれています。

参考:FSCジャパンhttps://jp.fsc.org/jp-jp

●PEFCとは

Programme for the Endorsement of Forest Certification(森林認証プログラム)は、1999年に発足した、35カ国、約3億4百万ヘクタールの認証面積(2017年6月末時点)を持つ、世界最大の認証制度。

スイスのジュネーブに本部があります。

参考:PEFCアジアプロモーションズ:http://www.pefcasia.org

●SGEC(エスジェック)とは

SGEC(一般社団法人緑の循環認証会議)は日本独自の制度でしたが、2016年にPEFCと相互認証することになったので、SGECを取っていた国内の団体や林業会社は自動的に世界的な制度のPEFCを取得することになりました。

参考:SGEC:http://www.sgec-eco.org

森林認証マークがついている製品はどんなもの?

森林認証のマークが身近なものについているかどうか、よく見てみましょう。

とくに毎日使うティッシュやコピー用紙などの紙製品には、認証マークをよく見かけます。

さらにコーヒーフィルターや、大手カフェチェーンの紙コップ、お菓子の紙パッケージなどにもついていますよ。

最近では、森林認証材を使った木製のオフィス家具や、木のおもちゃなども売られています。

買うときにマークがあるかどうか確認すれば、安心して使うことができますし、企業の環境貢献にもなりそうです。

子どもにも胸を張ってプレゼントできそうですね!

また、家を建てるのに使う柱や板などの木製品ももちろん認証材があります。

特に海外産の木材を使ったフローリングを選ぶときなどは、認証材かどうかを気にしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに森林認証マークは、木材以外の森の産物にもつけることができます。

たとえばキノコ類、天然ゴム、メープルシロップ、はちみつなども認証製品になるんですって!

日本にも森林認証を受けた森はあるの?

(画像引用元:http://fujiichi.hamazo.tv/e3162563.html

日本国内では、2000年に初めて三重県の速水林業がFSC森林認証を取得。

2016年3月時点で、国内33箇所の認証林(約39万ヘクタール)があります。

また、PEFC(SGEC)は、2017年6月時点で12万3,051ヘクタールあります。

日本の森林面積は約2,500万ヘクタールありますので、わずか数%ということになります。

先駆けて森林認証を取得してがんばっている木材産地を、各HPでチェックしてみましょう。

ちなみに、静岡県浜松市(天竜区)でもFSCの取得がさかんで、家一軒まるごとすべての木材を森林認証材で作ってしまったという森林認証材の家があるようです!

また、日本には、木材業界団体がさまざまな方法で認証する「合法木材」などのオリジナルの制度もあります。

2016年には「クリーンウッド法」が成立し、事業者が合法伐採された木材を扱うことが努力義務とされ、ますます注目されています。

さらに各自治体が認証する「都道府県産材」や「○○市産材」などのいわゆる”地域材”の産地を証明する認証制度は、産地を明らかにすることで信用性や愛着がわくことを狙っていて、補助金とセットになっていることも多いです。

日本国内では伐採届を出すことが義務付けられているため違法伐採の心配が比較的少ないので、国産材や地域材を選ぶというのもエシカルな選択肢の一つですね。

■参考:合法木材ナビ:https://www.goho-wood.jp

森林保護だけじゃない、森林認証の効果とは

このように、違法伐採を防ぐために世界にはさまざまな森林認証制度があります。

また、多くの森林認証制度は、森を守るだけでなく、そこではたらく人の労働環境や森で生活する地域住民の生活を守ることにもつながります。

最近ではアパレル業界でも、ファストファッション市場での労働環境が問題になったりしていますが、エシカル消費者のあなたなら、森や木にかかわる「人」のことも気になりますよね。

「自分が使っている木材が、自然や人の暮らしを破壊していたらやだな」という人は、森林認証材を選びましょう。

また、これからは、違法な木材を使わないことは、企業や社会に求められる当たり前の責任として求められていくでしょう。

FSCジャパンによれば、

2009年の米国オバマ大統領の就任式の招待状や2011年のイギリス王室のロイヤル・ウェディングの招待状にはFSC認証紙が使われています。

(FSCジャパンHPより:https://jp.fsc.org/jp-jp/fscnew/1-2-fsc

2012年のロンドンオリンピックのオリンピック公園はFSCプロジェクト認証を取得し、国際的イベントにおいてFSC認証材を使うことは近年、世界的な流れになっています。

(FSCジャパンHPより:https://jp.fsc.org/jp-jp/fscnew/1-2-fsc

とのことで、今後ますますトレンドになっていきそうです。

また、森林認証には、森林や関わる人を保護するという以外のねらいがあります。

それは、木材の産地がわかることで、顔が見える安心感や木材や森林への愛着がわくというものです。

経済がグローバルになる以前の昔は、自分の地域の木を伐って使うのが当たり前で、産地ははっきりしていたはずです。

木材の流通が世界規模になり森の姿が見えなくなってしまったことも、森林への関心が薄れていった原因のひとつかもしれませんよね。

「この木はどこから来たんだろう?」そんな思いを巡らせることで、森と暮らしがつながり、心が豊かになる。
そんな効果も期待したいところです!

まとめ:エシカル消費にはかかせない森林認証

環境や社会によい製品を使いたい、という倫理的な(エシカル)消費への関心が高まっています。

森林認証は、そんな暮らしを実現するためのキーワードのひとつ。

今日飲んだコーヒーの紙コップに、森林認証マークがあったらちょっとうれしい。

そして近い将来に、それが当たり前の光景になったらいいですね。

この記事の編集者

モリップ編集部 MORiP!

MORiP!を運営する編集部のメンバーたちが、選りすぐりの情報をお届けします。あちこちに散らばる森や木についての基礎知識をわかりやすくまとめることを目指しています。編集部みんなで実際に行ってきた森旅もご紹介しています。

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