「あさひねこ」の木曽五木って何?その特徴とは
日本のブランド木材には、○○杉といった1つの樹種だけでなく、その土地を代表するいくつかの樹種がセットになって、地域の林業の代名詞になっているものがあります。
今回ご紹介するのは、長野県から岐阜県にまたがる木曽地方の「木曽五木」です。
5つある木曽五木のうち、木曽桧以外の樹種をご存知ですか?気になるキーワード「あさひねこ」とは一体?
木曽五木の歴史や特徴についてまとめました。
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この記事の目次
「あさひねこ」で覚える木曽五木とは?
木曽五木とは、木曽地方を代表する5つの樹種のことで、アスナロ、サワラ、ヒノキ、ネズコ(クロベ)、コウヤマキ、です。
その頭文字を取って、「あさひねこ」と覚えるそうです。
それではなぜこの5つが、木曽を代表する樹種となったのでしょうか?
古くから豊かな森林があり、良質な木材の産地として知られてきた木曽は、江戸時代には尾張藩の領地でした。
平和な江戸時代、築城や建築などで大量の木材需要が生まれ、木曽の森も伐採されて荒廃してしまいました。
そこで、
尾張藩は1665年に留山(とめやま)・巣山(すやま)の立入禁止林や伐採禁止林を設け、藩以外の伐採を厳しく制限しました。1708年には、木曽谷全域にわたり貴重な木材である、ヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキの四木の伐採が禁止され、さらに1728年にネズコを加えた五木が地元民の伐採禁止木となり、この停止木(ちょうじぼく)が、後の木曽五木の由来となっています。
(出典:中部森林管理局Webサイト:http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/policy/business/sigoto/kiso-hinoki/hinoki01_01.html)
木曽地方でも、特に有用で大切な樹種として、300年余りにわたって守られてきたものが、現在の「木曽五木」になっているのです。
それでは、この木曽五木の木材としての特徴を見ていきましょう。
木曽五木のリーダー格!「木曽桧」の特徴
木曽はその名の通り、古くからヒノキをはじめとする木の産地として知られ、かつてこの地域では年貢も米ではなく木材で納めていたほどです。
木曽五木の中でも特に重要視されたのが、この地方で育つ天然の木曽桧(きそひのき)で、国内でも最高級の建築用材とされてきました。
このヒノキを守るために、見た目がよく似たアスナロやサワラやネズコも一緒に禁伐にした、とも言われています。
尾張藩による規制は大変厳しく、「桧一本、首一つ」と言われるほどで、実際に盗伐をした者は厳罰に処されました。
尾張藩は山を管理する公務員である「山守(やまもり)」を置いて、森林の監視や管理に当たりました。
現代で言う“フォレスター”が江戸時代からいたのですね。
この保護政策のおかげで、国内でも稀に見る200~400年という天然の桧が、木曽の山々に残されているのです。
それほど大切にされた木曽桧の特徴とはどのようなものでしょうか。
天然の環境で育つため、木曽桧は年輪が非常に緻密です。
また、数百年の年月を経た大きな木は節も出にくく、無節材を取ることができます。
そのため和室の高級内装材や、高級な桧風呂などに使われてきました。
また、木曽には、伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮に用いる御用材を育てるための「神宮備林」という森があり、今でも遷宮の際には斧で木曽桧を伐り出す神事が行われています。
また、近年再建された名古屋城本丸御殿でも、木曽桧の荘厳な空間を見ることができます。
次に、木曽五木の中でもほかの地域ではあまり見られない、木曽地方ならではの2つの樹種をご紹介しましょう。
淡いピンクが特徴の「サワラ」は桶が人気
サワラといっても、お魚の名前ではありません。
木曽五木の一つである樹種「サラワ」は、立木の状態では葉っぱや外見がヒノキにとても良く似ています。
しかし、木材にするとその材質はヒノキよりも柔らかいのが特徴で、柱などの建築用構造材には向いていないといわれています。
サワラの木は色がほんのりピンクで、あたたかみのある印象です。
フローリングにすると足触りがやわらかく、また壁に使うと空間がやさしい色味になり、そこにいる人の顔色もよく見えるのだとか。
建築以外でサワラの代表的な使い方といえば、風呂桶です。
軽くて水に強いサワラならではの特徴をいかして、木曽地方では今でも桶製品が作られています。
お風呂でサワラ桶を使えば、ほんのり木の香りを楽しむことができます。
また、ほどよく水分を吸ってくれて香りがきつくないサワラ桶は、食との相性もよく、サワラの寿司桶はプロの寿司職人に欠かせない道具です。
他の地域ではあまり馴染みのないサワラの木ですが、木曽の深い森では、巨大に育った天然のサワラの木が、ヒノキに混ざって立っているのを見ることができます。
「ネズコ」の下駄は水に強く軽いのが特徴
木曽地方の特産品の一つに、「ねずこ下駄」があります。
木曽五木の1つである「ネズコ」の木材は、黒っぽい褐色で、水にとても強いのが特徴で、年輪がとても緻密ですが、見た目から想像するよりもかなり軽く、柔らかい材質です。
軽くて水に強いネズコを使ったねずこ下駄は、足触りがやわらかく、足取りがとても軽くなります。
足音はカラコロというよりも、どこかサクサクと軽やかです。
また、ネズコの下駄は水に強いので、雨の日でも安心して履くことができます。
少し浮き立った細かな年輪の凹凸が、足裏にほどよい刺激を与えて心地よいです。
最近ではポップな鼻緒がデザインされたねずこ下駄も登場しているので、和服やおしゃれ着のアイテムとして手に入れたいですね。
このねずこ下駄、木曽地方以外ではなかなかお目にかかれないものなので、お見逃しなく。
ちなみにネズコの木は耐水性が強いことから、コンビニおでんの保温器の仕切り板にも使われたことがあるそうですよ。
木曽には全国的にも珍しく、ネズコを専門的に扱う材木屋さんもいるとのことです。
木曽五木に会いに木曽路の旅へ!
木曽五木には、長野県の赤沢自然休養林や岐阜県加子母の国有林で出会うことができますが、木曽五木が深く文化に根付いた木曽の町でも見かけることができます。
木曽地方の宿場町などの観光地では、木曽桧の風呂椅子やねずこ下駄などが売よくられています。
日本初の重要伝統的建造物群保存地区として知られる妻籠宿(長野県)では、江戸時代からの木造家屋の並ぶ美しい景観を見ることができます。
その中にある「南木曽町博物館」の歴史資料館には、地域と関係の深い木曽五木についての展示があります。
実際の5樹種の丸太の展示があり、それぞれの特徴がよくわかります。
また、林業の歴史を語る道具や、年貢として納めていた木材の実物大レプリカなどを見ることができ、往時の活気を感じることができます。
資料館の隣にある脇本陣奥谷(林家住宅・国重要文化財指定)も、木造の民家建築としてとても見ごたえがありますので必見です。
ちなみに木曽地方では、木曽五木を中心とした林業以外にも、木でお椀などを作る「木地師」の歴史も深く、所々に挽き物や木工の工房がありますので、そちらも併せて訪れたいところです。
■南木曽町博物館:http://nagiso-museum.jp
まとめ:木曽五木は、木曽の森の5レンジャー!
木曽五木は、それぞれに特徴があり様々なシーンで活躍する、木曽地方をまさに代表する針葉樹でした。
「あさひねこ」は、もう覚えましたよね?
木の里・木曽を訪れたらきっと出会える、個性豊かな5つのキャラクターたちです。